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【ご挨拶】

株式会社JSN 代表取締役  田代雅章

 

週刊「ボストーク通信」1000号を発行します。

 平素は、弊誌のご愛読を誠にありがとうございます。
本日、週刊「ボストーク通信(旧称ダーリニ・ボストーク通信)」が、1993年2月10日の創刊から通巻1000号となりました。これもひとえに皆様のご支援の賜物と心より感謝を申し上げます。

 1980年代後半、当時のゴルバチョフ書記長が提唱したペレストロイカ(ソ連の政治体制の改革)とグラスノスチ(公開)は、これから日本海側の各都市とロシア極東との交流を予見させるものでした。当時、新潟では「環日本海時代」の到来と、官民挙げて活発な勉強会が開かれていたことを懐かしく思い出します。私もそのような場所に出入りし、これから現実になるだろう対岸(ロシア極東、朝鮮半島、中国東北部)との交流を夢見ていました。
 私のウラジオとの出会いについては、こちらを参考にしてください。

 この20年間のロシア情報を振返ると、1990年代はロシアの政治経済の混乱から日本企業の進出のニュースより、日本海への核の不法投棄、ウラジオの弾薬庫の爆発、武器の密輸出など社会の混乱を象徴する事件が多くありました。言い方は悪いのですが、事件が起きるとジャーナリストは儲かる、弊社も仕事になっていました。
 1993年4月、太平洋艦隊が日本海へ核の不法投棄をしていたことが日本でも新聞やテレビで大きく報道されました。実は、この事件を海外メディアに提供した軍関係の記者から、弊社にも早い段階から情報が入っておりました。まだ情報会社としてスタートしたばかりの弊社には、事実確認ができず情報誌での掲載を見送った苦い経験があります。
 また、当時、日本のテレビ局の仕事もしており、様々な事件の映像を日本へ送っていました。その中でも特に印象に残っているのは、2001年7月、北朝鮮の故金正日総書記がロシアを電撃訪問した際、弊社は事前にその情報を入手し、ロシア側国境のハサン駅で撮影に成功。また、2002年には、日本でのテロを計画し逮捕されたオウム真理教のロシア人信者シガチョフ被告の裁判を傍聴、裁判記録集を発行しました。その際、ウラジオストク取調拘置所内でのシガチョフ受刑者への単独インタビューを行うなど、日本と関係する多くの事件を伝えてきました。
この20年の間、弊社は雑誌を発行しながら、日本およびロシアのマスコミにも情報提供を続けてきました。

 情報誌の発行の目的は、近い将来、日本海側地方都市とロシア極東地域のダイナミックな経済交流をイメージし、日本側にロシア情報が少ないことから週刊「ダーリニ・ボストーク通信(極東通信)」発行を決意しました。
創刊の際、情報誌の発行場所を新潟にするか東京にするのか悩みました。聞いたこともない会社が地方からロシア情報を発信して読者はついてくるのだろうか・・・。
当時、対岸ロシア極東の日本側の玄関口は新潟でした。1965年、新潟市はハバロフスク市と姉妹都市締結をしており、日本から唯一ロシア極東(ハバロフスク)への定期空路もありました。東京の商社の方達は、新潟空港からロシア極東のハバロフスクやウラジオストクへ飛んでいました。新潟がロシア極東の窓口であることは日本全国に知られており、ロシア極東情報は「新潟発」しかないと決心がつきました。
そして、読者層を日本海側都市の自治体や企業と考えたのは、正しい判断であったと確信をしています。

 しかし、その後ロシア極東地域はロシアの地方都市から日本政府や日本の大企業が注目する地域と変わっていきました。
2000年、エリツイン大統領の突然の辞任後、大統領にプーチン氏が選ばれました。同大統領は、1999年から勃発した第二次チェチェン紛争を力づくで解決、ロシア国民からの絶大な支持を得たことはご存知と思います。そのプーチン大統領の登場からロシア経済の発展戦略が西側から極東地域に大きくシフトしました。

 ロシア政府は、2007年から2012年までに約2兆円に上がる極東インフラ投資を行い、2012年9月にはAPEC首脳会議をウラジオで開催、成功したことは記憶に新しいと思います。また、2013年3月、極東開発をさらに促進するため、民間投資を含めて約30兆円に上る「極東およびバイカル地方の社会・経済発展に関する国家プログラム」を採択しています。また、エネルギー政策では、ウラジオストクにオイルとガスの集積場をつくり、日本及びアジアの新興国にエネルギーを供給していくことを考えています。
 ロシア極東の発展プログラムは国家プロジェクトとなり、日本側パートナーも日本政府や大手企業となっています。このようなロシア側の極東を重視した政策に合わせて、情報誌も徐々に変更をしてきました。

 この度の1000号発行で多くの方からお祝いの言葉を頂いています。必ず言われるのが、「ロシア相手に良く頑張っていますね」という言葉です。

 現在、情報誌の編集は河尾編集長を先頭に5名のスタッフが毎日遅くまで編集作業に明け暮れています。日本側に少しでも有益なロシア情報を提供したいとやっています。
この場を借りまして、情報誌の発行に携わってきた歴代の編集スタッフおよび多くの皆さんにお礼を申し上げます。大変有難うございました。今後は2000号を目指していきましょう。
また、読者の皆さま、今後とも、これまで同様のお引き立てを賜りますようお願い申し上げる次第です。

 現在、ロシア側で進めている極東開発プロジェクトに日本がどのように関わるのか、また極東の産業クラスターと日本海側の各都市との連携がどのように進むのか、注目が集まっています。そして近い将来、ロシア極東と日本の中小企業が協力できる様々な案件が出てくることを切望しています。



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