8月はウラジオストクでも真夏の季節となり、連日20度後半の暑い日が続く。この時期、中心部から程近い海水浴場は、休日平日を問わず市民と観光客であふれかえる。海岸通り沿いにはほかに、遊園地、ヨットクラブ、映画館、水族館、飲食店、商店、ビアガーデンなどたくさんの娯楽施設が集まっており、海の町ウラジオストクのシンボルともいえる地区となっている。
この地区にあるビアガーデンが、私がウラジオストクで一番好きな場所だ。理由は二つある。一つ目は、風情があること。真夏のウラジオストクは日没が午後9時ころと遅く、ちょうど酔いが回る時に沈みゆく太陽を眺めることになる。何ともいえない独特な趣がある。
二つ目は、この場所でしか堪能できないものがあるから。ビアガーデンに隣接して、ナマコや干しダコ、サキイカなど日本でもなじみのある海産物を扱う店があるのだが、ここで売られている「メドベトカ」と呼ばれるシャコに似たエビのボイルが大変おいしい。このボイルと沈みゆく太陽をつまみに、独特な風味のあるロシアビールを飲むのが至福の時だ。
この店の運営会社とウラジオストク市行政府との間では、土地の賃借権などでトラブルがあり数年前から裁判ざたになっていた。今は解決されたようで安心しているが、店の強制撤去や営業停止の可能性などの報道を見聞きするたびに「ビアガーデンでメドベトカが食べられなくなったら大変だ。市長殿、ささやかな楽しみを奪わないでくれ」などと祈ったこともある。
とにかく、今の時期の海岸通りはウラジオストク一の歓楽地。当地を訪れる機会のある方は、ぜひ訪れていただきたい。
2009/08/18 JSN 黒須 将道
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2009年8月18日掲載の記事「ロ経済の未来判定できず」を転載したものです。