ロシアでは7月1日からルーレットやスロットマシンを備えたカジノの営業が禁止された。カジノを禁止する法律が成立したのは2006年のことなので、いまさら驚くべきことではないのだが、街中、いたるところにカジノやスロットマシン場があったので、はたして全面禁止できるものなのか、と余計な心配をしていた。6月最後の週末、ウラジオストクからモスクワに出張していたので、知り合いのロシア人を誘ってカジノに足を運んでみた。
最後の週末ということもあり、普段よりも客の数は多かったようで、かなりのにぎわいを見せていた。知人は、ごく普通のモスクワ市民だが、以前からたまに、気晴らしのために来ていたらしい。ビールなどの飲み物がただで飲めるので、「仮に負けても、普通に飲みに行ったと思えば、損した気分にはならない」とのこと。私自身は、こういう娯楽はあまり得意でないので、彼がプレイするのを横に座って眺めているだけであったが、こういう週末もありかな、と思った。
翌週、このカジノの近くを通りかかったので、中をのぞいてみると、スロットマシンやルーレットが、ちょうど運び出されているところであった。法律で決められたことなので、当然と言えば当然なのであるが、本当に禁止してしまえば、税収が減り、大勢の失業者がでることになる。しかも、経済危機の影響で、給料の遅配や失業者の増加が徐々に目立ち始めている時期である。とはいえ、カジノの負の側面を、見過ごすことができないと政府が判断するのは当然かもしれない。多少の批判はあっても、こういう大胆な策をやってのけてしまうロシアの実行力にはいつも驚かされる。
2009/07/14 JSN 浜野 剛
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2009年7月14日掲載の記事「ロ経済の未来判定できず」を転載したものです。