11月26日の昼ごろ、ウラジオストクでは、ごう音とともに家々が揺れ、ガラス類や食器がカタカタいうなど、地震に似た現象に襲われた。「ここでは地震は起きな
い」というのが市民の間での常識だが、さすがに今回は地震が起きたのではないか、と思わせるほどのものだった。
程なくして行われた市行政府の発表によると、原因は地震ではなく「戦闘機の低空飛行による衝撃波」だという。家屋の倒壊やけが人などはなしとのことで一安心、と
思う間もなく続報が発表された。
実際には、ロシア太平洋艦隊が古い弾薬類を爆破処理したことから起きたというのだ。爆破処理はウラジオストクから南西に50kmも離れた港町スラビャンカの郊外 にある軍事施設で行われていた。現場付近の住宅や学校などでは衝撃波により窓ガラスが割れ、零下の外気が直接入って寒いので地元の病院に非難した住民が数十人に 上った。幸いなことに、ここでもけが人は一切出なかったと伝えられている。
弾薬類の量は数値上では規定を超えていなかったが、天候条件や風の流れが悪かったためにこのような事態になってしまったという。現在、地元の自治体は衝撃波の被 害について損害賠償を求める準備をしており、軍の検察機関は事実関係の調査を開始した。
太平洋艦隊は沿海地方に拠点を多く持ち、地域と共に歴史を刻んできた、引き離そうとしても引き離せない特別な存在だ。原子力潜水艦「ネルパ」の消火装置誤作動の 事件も記憶に新しいが、住民から変わらぬ信頼を得続けるためにも、地域住民の安全を念頭に置きながら業務を遂行していくことの必要性を感じずにいられない。
2008/12/9 JSN 黒須 将道
※この記事は、新潟日報紙の「北東アジア便り」2008年12月9日掲載の記事を転載したものです。