ロシアでは、3月8日は「国際婦人デー」という祝日で、国民の休日になっている。女性の人権運動や社会主義運動が起源とされており、以前社会主義体制をとっていた同国にとっては、なじみの深い祝日である。
現在では政治的な意味合いはほとんどなくなっているが、「女性をたたえる」という本質は残されている。具体的には、幼稚園、学校、職場、家族、近所、恋人、その他、社会のあらゆる立場にいる女性が、年齢を問わず、男性からお祝いの言葉、花束や贈り物を受け取る。社会全体が、女性を祝おうという雰囲気に満ちてくる。
街中ではギフト商戦が繰り広げられ、仲間内の宴会などで飲食店需要が急に高くなる。特に、花は祝日をピークに普段の数倍にまで価格が高騰、取引量も1年のうちで最も多くなるなど、業者には一番の書き入れ時だ。
以前、新潟県産チューリップがロシア極東向けに出荷されたというニュースを耳にしたが、祝日用の需要を見込んでのことだったのだろうか。ウラジオストクでは、日本製品はロシア国内産や他の外国産に比べ数倍高いことが多いが、花の場合は価格が全体的につり上がるので日本産品にも価格競争力が生まれるのかもしれない。
祝日前日、会社によっては朝から事務所の中で宴会を始めるなど、早くもお祭り気分のところが見られた。実に豪快。彼らにとっては、当日だけでなくその前日も祝日なのだ。私は、他社のそのようなさまを横目に「仕事場で酒を飲むなど到底まねできないな」などと思っていた。だが、終業間際、ロシア人同僚がわさわさ動き出したなと思った次の瞬間、事務所の応接テーブルにはすでに酒の席が準備されていた。「郷に入っては郷に従え」と思い、グラスのコニャックを飲み干した。
2008/03/25 JSN 黒須 将道
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2008年3月25日掲載の記事を転載したものです。