ウラジオストクには、鉄道、路線バス、フェリー、トロリーバス、路面電車、ケーブルカーなどさまざまな公共交通機関がある。中でも市民の利用頻度が高いのは路線バスだ。何十もある路線が市内を網羅しており、便数も多いため、まさに市民の足となっている。私自身、仕事に私用にと毎日のように利用している。
街を走る乗用車は日本車が圧倒的に多いが、こと路線バスとなると事情は違う。ロシアでは車は右側通行であるため、乗降口も右側になければならない。というわけで、路線バスは、同じく右側通行である韓国から入ってくる中古車両がほとんどだ。
乗り方は日本とほとんど変わらず、料金は降りる時に運転手に支払う。ただ、日本の多くのバスのような両替機などはない。混雑時に金額の大きい札などを出すと、運転手や他の乗客に煙たがられるので、なるべくお釣りが出ないよう心掛ける。
同一路線の場合でも、日本では乗車区間によって運賃が違ってくる場合が多いが、ウラジオストクでは利用区間にかかわらず運賃は一律。以前は8ルーブル(約36円)だったが、1月1日から値上がりし、10ルーブル(約45円)になった。
小額とはいえ負担増。しかし、不満の声はあまり聞こえてこない。年金受給者など社会的特典を受ける人たちは無料のままだし、一般の乗客はといえば、以前は細かい硬貨を何枚も数えて8ルーブルを用意していた手間が、今は10ルーブル紙幣たった1枚で済むようになった。
ロシアの全国的なインフレ傾向を考えれば、今回の値上げは止むを得ない。むしろ、何かとせっかちな現代のウラジオストク市民は、値上げのおかげで手っ取り早くバスを利用できるようになった、と思っている人も少なくないかもしれない。
2008/02/11 JSN 黒須 将道
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2008年2月11日掲載の記事を転載したものです。