JSNトップページ > ロシアな日々 > ウラジオ短信

ウラジオ短信

変わるロシア 変わらぬ人情

3月下旬のある日、ウラジオストクの視察に来ていた取引先の方を送るため、市内から空港に向かっていたところ、ハプニングに見舞われた。タクシーが故障してしまったのだ。市内−空港間は約50キロ。運悪く、中間地点で戻ることもできない。車は日本製だが、エンジンが焼け付き、動きそうにない。困った様子の運転手は沿道に出て、ヒッチハイクをし始めた。

極東地域を走る車のほとんどは日本製の中古車だが、最近では製造7年を過ぎた車には高い関税が課せられるので、新車に近い車も多く見かける。だが、ガソリンの質の悪さやボコボコの道路など複合的な理由で自然、故障が多くなる。

一昔前であれば、一般の人が白タク行為をしていたので、手を挙げれば何台もの車が止まってくれた。小遣い稼ぎもあれば、ほとんど生業とする人もいたようだ。最近では白タク行為をする人は少ない。取り締まりが厳しくなったし、タクシー会社も増えてきた。人々の生活水準が上がってきたことも一因だと思う。ただ、今も新潟のような「流し」のタクシーは少なく、手を挙げると一般の車が止まって交渉次第で乗せてくれることもある。

一緒にいるお客さんは、ロシアどころか海外自体が初めて。根拠がないのを自覚しつつ、「ロシアだから何とかなりますよ」と話していると、案の定、車が止まってくれた。運転していた女性は、方向こそ同じだが、空港よりもはるか先のウスリースク市に向かうところ。少し遠回りになるのだが、気にするそぶりも見せず、事情を説明すると快く承諾。空港まで送ってくれた。

別れ際、2人でお礼を言うと、「ロシアでは車の故障はよくあることだし、困ったときはお互いさまよ」。見知らぬ外国人を乗せることは、なかなかできないことなのに。飛行機に間に合い、一息ついたお客さんが、「新潟で困っているロシア人を見たら、親切にしよう」と話したのが印象的だった。

2007/04/13 JSN 濱野 剛

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2007年4月17日掲載の記事を転載したものです。

<<ウラジオ短信一覧へ戻る



page top