ロシア政府は2012年に開催される「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」のウラジオ開催をほぼ決定した。驚くことに中央政府はウラジオのインフラ整備に1000億ルーブル、日本円にして約4500億円の投資をするというのである。
今年1月27日、インド訪問を終えたプーチン大統領と随行の中央政府の要人らは、モスクワへの帰路ウラジオに立ち寄った。ウラジオ滞在は6時間であったが、APEC開催に向けての問題や極東地域の経済発展にかかわる諸問題が話し合われた。
ウラジオ開催の狙いは、アジア太平洋地域におけるロシアの地歩を強化して、沿海地方を極東全体ひいてはロシア全国の社会・経済発展の成長点とすることである。
その後、モスクワに戻った大統領は、APECの主要会場をルースキー島とすることを決定し、同島を重点的に開発するよう改めて指示を出している。ルースキー島は、軍の施設が数多くあったため、数年前までは外国人の立ち入りが制限されていた。その後、軍施設を観光の目玉として開放したが、事業がうまくいっているとはいえなかった。
また、プーチン大統領は、APEC開催後にはルースキー島を観光、レクリエーション地帯とすること、この島がロシアの保養地となるようなやり方で進めねばならないと指示をしている。そこでルースキー島には海洋水族館、ホテル、ゴルフ場や保養ゾーンなどの計画が浮上している。
数十年前からウラジオでは「大ウラジオ計画」なる夢のような話があった。風景の美しい金角湾に横断橋を架け、その上をロープウェーが観光客を乗せて行き来する。しかし、それを信用するウラジオ市民はいなかった。だが、APEC開催に向かって夢が現実のものとなりそうである。
2007/03/16 JSN 田代 雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2007年3月20日掲載の記事を転載したものです。