「こんな暖かい冬は初めて」。新潟で最近こういう会話をよく耳にするが、ウラジオストクでもまったく同じ言葉を聞いた。
2月のある日、ウラジオストクの最低気温はマイナス10度。日中でもマイナス3度ほどまでしか上がらない。新潟からやってきた私にとっては十分寒かったが、ロシア人はみなうんざりとした表情で「暖かい」と言う。それもそのはず、沿海地方の今年1月の天気は、過去70年間で最も暖かく、1日の平均気温は平年より5-8度も高かったらしい。
私は寒いのが大の苦手で、暖冬をありがたく思っている一人だが、ロシアの人々はあまり快く思っていないようだった。
一番の理由は、気温が上がると雪が解けて、街が汚れるからだ。確かに大雪の後は、至る所に水たまりができて、泥は跳ねるし、靴は汚れる。その後、気温が下がると、解けた雪が再び凍ってしまい、何度も転びそうになった。。
暖冬が続くと、暖房費も安くつくし、人々の経済活動も活発になるので、ロシアの場合、景気がよくなると言われている。その反面、ロシアには「暖冬の次は冷夏がやってくる」との言い伝えがあり、「冬は寒くないといけない」のだそうだ。本当に冷夏になるかどうかは分らないが、先人からの知恵だとすると、どこかで帳尻が合わせられるのだろうか。「暖かい」と能天気に喜んでばかりはいられないのかもしれない。
2007/02/23 JSN 浜野 剛
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2007年2月27日掲載の記事を転載したものです。