10月9日、北朝鮮の行った地下核実験は、国境を接するロシア沿海地方の住民も震え上がらせた。
放射線量を測る線量計を買い求めた市民は多くはないが、心理的には多くの住民が目に見えない放射能を心配したのは確かである。
ウラジオの人々は、この核実験をどう見ているのか、また、市民の抗議行動を追ってみた。弊社と同じ建物に事務所が入っている女性職員らは、「北朝鮮には厳しい対応策をとるべきだ」、「私たちの存在を脅かしている」、「放射能の恐れがないようなので少し安心した」と、この核実験には批判的であった。
また、知合いのジャーナリストらに連絡をすると、「アジア地域における関係は緊迫する。バランスが崩れないように、韓国も核兵器を開発し始める恐れがある」と、北東アジア地域の安全保障を心配する意見が多かった。
また、別のジャーナリストは「自国防衛のために核兵器を保有するのは悪いことではない。問題なのは、それを使う人が善人か悪人か。ウラジオは北朝鮮に近く、北朝鮮は核実験の安全を保障する技術が発展していない国である」と、核保有は擁護する意見もあった。
また、12日にはサービス経済大学で学生の抗議集会が行われた。同校の生徒ら約千人が参加をした。参加者は「われわれ学生は核戦争に反対」、「核実験は北朝鮮、被害は沿海地方」などと書いたプラカードを掲げた。学生の代表は「北朝鮮は沿海地方と国境を接している隣国である。風も海も共有している。北朝鮮の核実験のもたらす脅威はわれわれに降りかかってくる」と、抗議した。
13日には、ナホトカにある北朝鮮領事館で青年政治運動の活動家20名が抗議集会を開き、「核実験はロシア国民にも脅威」と声を上げた。
領事館員は建物の窓からこの抗議集会を見ていたようだが、本国に隣国の声が届くことを祈りたい。
2006/10/13 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2006年10月17日の記事を転載したものです。