少し前のことになるが、あるお金持ちのロシア人に冗談半分に、モスクワの不動産取引に投資してみないか、と言われたことがある。98年の金融危機の後、経済が持ち直してくると、不動産への投資機運が高まり、モスクワなど都市部のビルや集合住宅の価格が高騰し、一種の「不動産バブル」のような状況が生まれた。もちろん、80年代の日本や最近の中国のような過熱ぶりと比べるまでもないが、「土地ころがし」で財を築いた人も随分いたようである。ロシアの金融制度はようやく機能し始めたばかりで、インフレもだいぶ収まったが、今なお年10%近いインフレ率を示している。銀行からお金を借りるにしても、金利はやはり高すぎる。このロシア人はそこに目をつけ、金利の低い日本で資金を調達したかったようだが、丁重にお断りした。
ウラジオストクでもやはり、不動産の価格が高騰している。最近になって、ようやく上げ止まる傾向を見せているが、市内の平均的なアパートの販売価格は1平米で1000ドルを超える。また、アパートを借りるにしても、市の中心部では、1DKで月の家賃が400ドルは下らない。統計上の平均賃金が200ドル程度(実際はこれよいもかなり多いと言われる)であることからも、いかに高いかが分かる。しかも、住宅需要が逼迫しているわけでもない。ソ連時代、まじめに勤めてさえいれば、国からアパートを支給されたものだが、今ではロシアもローンを組んで買う時代となった。遠い昔を懐かしむ声が聞こえてきそうである。
2005/08/19 JSN 浜野 剛
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2005年8月掲載の記事を転載したものです。