今まで、ロシアに入国する際、「税関申告書」に所持品や所持金を記載し、税関のチェックを受けることが義務づけられており、誰もがロシアの税関は恐いものと思っていた。
ロシアの出入国時には、それぞれ税関申告書を提出せねばならず、特に所持金襴の記載が重要で、入国時より出国時に現金が増えていてはならない。
最近、この規則が変更となり所持金が3000ドル以下であれば、「税関申告書」の提出義務がなくなった。これは、逆にロシアから海外へ出る場合、3000ドルまでは自由に持ち出せることを意味する。
90年代半ばまで、ウラジオ空港で税関にトランクケースを開けられていた私には、この規則改正は格別の段がある。私は帰国時、資料としてロシアの新聞を大量に持ち帰るのだが、出国の際に必ず税関に理由を聞かれるのが常であった。そこで、弊社のロシア人スタッフが、「審査時間が長いので読むために持ってきた」と税関に言えばいいと、本気ともつかぬ冗談を言っていた。
しかし、ロシアの税関にはアナログ的な人間臭さも感じていた。ある日、珍しいウォトカを見つけたのでお土産に買った。出国の際、税関の担当者から「これは偽造品だよ。ロシア製ではないからね」、また、ロシアの商品をお土産に持ち帰るときには「この商品はいいよ。俺も使っているけどお薦めだね」と、アドアイスというか人間的な交流があったことが嬉しい。
また最近、ロシア極東税関職員の機転で、日本の盗難車がナホトカ港に陸揚げする直前で発覚した。現在、この盗難車は日本へ戻される手続きが取られている。ロシア極東税関にしてみれば余計な仕事が増えるだけだが、日ロの司法当局間の交流が輸入阻止と返還を実現させた。
また、来年1月より新関税法典が施行され、通関手続きが大幅に簡易化・迅速化されようとしている。徐々にではあるが、ロシアの税関システムが整備され日ロの貿易もスムーズにやれる日が近づいているように見える。
2003/08/29 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2003年09月掲載の記事を転載したものです。