ウラジオストクでまた残念な事件が起きた。留学中の日本人学生古川崇さん(24)が自宅アパートで殺害された事件である。現地の捜査当局は事件発覚の2日後に容疑者を指名手配するなど、事件の早期解決に自信を示しているが、22日の時点で、犯人はまだ捕まっていない。ウラジオでは、3年前にも日本人教師が強盗目的で殺害される事件が起きており、関係者に動揺を与えている。
海外で暮らすにあたり、治安の問題は何もウラジオに限ったことではない。大学の担当者に話を聞いたところ、「留学生がアパートを借りる際、アパートの持ち主と本人を面接し、治安とアパート住民に問題がないかを充分チェックしたうえで、許可を出している。今回も、治安などの問題は無く、また、彼が24歳ということから許可した」とのことである。捜査の途中であり、不確かなことは言えないが、今回の事件では自宅から現金や電化製品が消えており、顔見知りによる金品を目的にした強盗殺人である可能性が高いことから、この担当者は落胆の色を隠せなかった。
22日には、古川さんが通っていた極東大ロシア語カレッジで卒業証書授与と追悼式が行われた。これは、昨日現地入りした古川さんのお父さんのために、学校側が急遽開いたもので、100名もの学校関係者や友人が参列した。私もこの式典に出席させて頂いたが、古川さんのお父さんは、友人らからウラジオでの暮らしぶりを聞き、「本人にとって好きなウラジオで過ごした幸せな1年だったと思います」とスピーチされ、参列者の涙をさそった。
地元メディアによると、過去数年間、外国人が被害者となった重大事件のうち、解決しているのは、わずか1件に過ぎない。このような状況が、外国人に対する犯罪を増長させていると言えなくもない。志半ばにして尊い命を落とされた古川さんのためにも、一日も早い事件の解決と、ウラジオの治安改善を望みたい。
2002/03/22 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2002年03月掲載の記事を転載したものです。