沿海地方南部でロシア正教のクリスマス(1月7日)から降り始めた雪は、約3日間断続的に降り続け、ウラジオでは実に2ヶ月分の降雪量が記録される大雪となった。「50年に1度」というこの大雪は、市民生活を混乱させ、除雪作業に軍の車両が駆り出されるほどの非常事態を招いた。
道路では雪で動けなくなった車が渋滞の引き金となり、公共交通機関が事実上ストップ。コプィロフ市長自ら除雪作業に加わり、弊社スタッフも市長に自分の車を押してもらったとのこと。また、港町特有の急勾配の多い地形が災いし、接触事故、歩行者の転倒が相次ぎ、市内の病院はけが人であふれた。さらに悲惨だったのは、渋滞で病院までなかなかたどりつけなかった人もいたことだ。
弊社の女性スタッフも、通勤途中でバスが動かなくなり、1時間ほど歩いてきたとのことだった。「大変だったでしょう。帰りはどうするの?」と尋ねると、「ニチェボー(大丈夫)」という返事が返ってきた。そのうちバスが動き始めるから「大丈夫」なのだそうだ。
ロシア人の口から発せられる「ニチェボー」を聞くと、私は不思議と「大丈夫」なんだと安心させられるが、その一方で彼らがそう答える根拠が曖昧なときもあり、そのあたりの見極めが難しい。とりわけ、物事を周到に準備し、常に万が一のことに備える「日本人」には、この「ニチェボー」が理解できないことが多い。
とはいえ、今回の大雪では、強風が吹き荒れ、各地で停電も起きた。さすがのウラジオ市民もこの思いがけぬ「クリスマス・プレゼント」にはうんざりしていたようである。
2002/01/18 JSN 浜野 剛
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2002年01月掲載の記事を転載したものです。