この9月、仕事の関係でロシアの二軒の家にお世話になった。その一軒は、ウラジオの郊外に住むスベトラーナさんのダーチャ(別荘)。もう一軒は、ウラジオから400`北のダリニレチェンスクに住んでいるアレックさんである。
スベトラーナさんのダーチャは2階建ての本格的な住まいである。今は、職場も近くに見つけ本宅となっている。夫と二人住まいだが、休日ともなると娘夫婦と孫が集まり笑い声が絶えない。
家の脇では食肉用のウサギ20羽やニワトリなども飼い、畑では自給用の野菜が採れ、ぜいたくな生活はできなくても何不自由ない暮らしぶりが感じられた。また、バーニャ(ロシア式サウナ)もあり、家族で楽しんでいる。
アレックさんのお宅も3階建ての一軒家で、今も自分で建築中である。アレックさんは、ダリニレチェンスクで運送会社の社長をしており、忙しい時間の合い間をぬって家庭菜園にも精を出している。口にするものは、自分で栽培した安全なものばかり。アレックさんも、自宅に大きなバーニャを建築中で、「友人が来たときに、皆でビールを飲んで楽しむのさ」と屈託がない。
ロシア人が生活の苦しさを冗談で笑い飛ばせるのは、このように大地にどっしり根付いた生活のバックボーンがあるからだということを改めて感じた。
日本の生活と比較しても始まらないが、日本にいると企業の倒産やリストラの話題、日本の経済は大丈夫か?などと、暗いニュースばかりである。ロシアの経済も決していいとは言えないが、生活の楽しみと夢がある分、彼らが幸せに見えてくる。
2001/10/25 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2001年10月掲載の記事を転載したものです。