沿海地方の新しい知事がようやく決まりそうだ。6月21日、 地方選管はセルゲイ・ダリキン氏の当確を伝え、この結果、 大統領系候補は敗れ去った。中央政府寄りの政権樹立はまたしてもならなかったが、プーチン大統領は、「何よりも選挙が無事行われたことが重要。新知事は(暖房シーズンが始まる)冬に向けた準備に一刻も早く取り組む必要がある」とコメントするなど、 政府としては新知事に対し比較的好意的な姿勢を見せている。今後の焦点は、すでに出遅れた今冬のエネルギー危機対策へと移り、今月末、カシヤノフ首相がこの問題の協議と新知事との関係作りのために沿海地方を訪れることになっている。
そもそも前知事が辞任したきっかけは昨冬のエネルギー危機である。にもかかわらず、知事選に勝利したのは、前知事の支持を受けたダリキン氏であった。この構図は、プーチン氏がエリツィン前大統領によって首相に抜擢され、大統領選に勝利した時のことを想起させる。プーチン氏は最高責任者としてチェチェンの「テロリスト」制圧で成功を収め、前大統領から権力を譲り受けたが、大統領就任後は前政権の体質をドラスティックに転換。前任者とその周辺からの影響力を巧みに排除し、山積する難題をクリアしつつある。ダリキン氏は、プーチン大統領と同じく前任者の影響力を排除し、恒常的なエネルギー問題という負の遺産を処理できるのだろうか。新政権にはその第一歩として、エネルギー危機を政争の具とした前政権の過ちを繰り返さず、住民が安心して冬を迎えられる効果的な措置を講じることが求められる。
2001/06/25 JSN 浜野 剛
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2001年06月掲載の記事を転載したものです。