今、ウラジオストクでの車の売買には、変わったやり方が市民に定着している。スタッフのアンドレイと街中を車を走らせていると、信号待ちで隣に止まった車から「その車いくらで売るのかい」と叫んでくる。アンドレイが××ドルだと返すと、お互いに電話番号と名前を交換して後日、値段交渉に入るのである。
昨年8月のルーブル切り下げ以降、日本製の中古車価格が2、3倍になり、新しい中古車の買い付けが減っているが逆に国内の中古車の流通が活発化している。
極東税関によると昨年の1月から9月までは、月平均700〜1000台の中古車がウラジオ税関を通じて持ちこまれた。その後、10〜12月の3ヶ月間の通関実績は月8〜20台と急激に落込んでいる。大手の中古車販売会社では、ルーブル切り下げ前は月間100台販売していたが最近は2ヶ月で10台ほどだと嘆いている。
そのため中古車ビジネスの世界では、日本から輸入してロシアで1〜2年使用した車両の売買が活発になった。この価格は日本から新たに輸入したものより1000〜2000ドルほど安く、販売価格が1000〜2500ドル。比較的新しい車でも3500〜4000ドルで売買されている。市民は、このようなやり方で自分のふところにあった車を見つけている。
ウラジオを見る限り日本車の需要は減っていない。価格が合わないことから新たな買い付けが行われていないのである。
また、2000年問題として世界では 「コンピューターの誤作動」が挙げられるが、ウラジオでは「右ハンドルの禁止」が話題となる。
6年前、2000年の「右ハンドル車の登録禁止」を出した政府の方針の背景には、右ハンドル車による交通事故の多発(ロシアの車両は右側通行)とヨーロッパ車を輸入している業界団体(主にロシアの西側)からの圧力で極東の競争相手を排除しようという目的があった。
極東の人々はこの問題を楽観視している。カービジネスに携わる企業も、「右ハンドル車の登録禁止」は不可能だと言う。しかしウラジオを走る乗用車の95パーセント以上が右ハンドル車であることを考えると、何らかの法規制も必要かなと思ってしまう。
1999/05/27 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1999年06月掲載の記事を転載したものです。