沿海地方のナズドラチェンコ知事とチェレプコフ・ウラジオストク市長の政争はロシア国内でも知られている。そのため、沿海地方は政治的スキャンダラスな地域として見られているようだ。
9月に行われたウラジオ市長選挙は、投票日前日チェレプコフ氏が候補者資格を取り消され、結果は選挙が無効になるという事態を招いた。再選挙が来年1月17日に予定されている。
そんな中、12月11日ウラジオ市長が大統領令で職務停止を受けるという騒ぎがまた起こった。モスクワから帰郷した知事は14日、市長代行を任命し、ウラジオは「二人市長」という前代未聞の二重政権状態になった。
しかし、その後モスクワから駆けつけた下院議員団によって、知事との間で事態の収拾に関する覚書が交わされ、市は落ち着きを取り戻した。ウラジオ市民は、もうこんな状況にうんざりしている。
しかし、そのナズドラチェンコ知事は中央でのロビー活動には定評がある。政治家としては中央でも十分活躍できる素質をもっている。最近はプリマコフ首相と「友人」であることを前面に押し出してモスクワで活躍している。
片や、チェレプコフ市長への市民の支持は高い。生活インフラがずたずたであるウラジオ市で、最近の道路建設や修理は目を見張る。交通渋滞ヶ所では立体交差橋を建設したり、道路の拡張工事を至るところでやっている。個性豊かなこの二人の指導者が手を結ぶことで、沿海地方の経済は大きく飛躍できると期待している人々も多い。
今、ロシアでは地方の権限がますます大きくなってきている。政府と地方が経済活動において双方の権利を定めた「権限区分条約」を結ぶことができる。この権限は経済活動だけに及ばず、外交政策や安全保証にも、地方の利益を考えなくてはモスクワは何も出来ないという状況がある。
サハリン、ハバロフスクは政府とこの条約に既に調印しているが、沿海地方は結んでいない。ウラジオの発展は両首長の協力からしかありえない。
1998/12/24 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1998年12月掲載の記事を転載したものです。