日本政府が国民に「商品券」を支給するというニュースはロシアのテレビでも放送された。知り合いのロシア人に、「日本で『タロン』を国民に支給するって本当?」と聞かれた。
この「タロン」というロシア語は引換券やクーポンを指す。「タロン」と言えば忘れもしないのが、私がウラジオに留学していた時にソ連政府が発行した、「国営店用クーポン券」である。
当時は価格の自由化を控えて、多くの商店が売り控えをし国営商店の店頭はカラ。もちろん、物はあるところにはあったが、値段は国営店の数倍した。
政府の発行したクーポン券は配給券とは違い、国営商店で指定の量を国営価格で買うための券である。たしか、バターはクーポン1枚で100g買え、大人1人1週間分の量とされていたように思う。
しかし、100gのバターなど1回のお茶の時間に使い切ってしまう。数ヶ月分のクーポンをうっかり洗濯してしまって泣くに泣けないという人もいた。
ただし日本と違うのは、国民全員に「タロン」が支給されたこと。私たち外国人留学生さえ、色とりどりの切符をもらった。
当時、バブルの国からやってきた私たちは、まったく第三者的立場で「タロン」初体験を面白ろがったものだ。ソ連の「タロン」と日本の「商品券」は機能的には随分違うが、私に質問したロシア人は日本に親近感を抱いただろうか。
1998/11/16 JSN 釈囲美法
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1998年11月掲載の記事を転載したものです。