旧ソ連時代、ウラジオストクでいちばん大きな書店に勇んで入ったものの、共産党関係の本しか見つからなくてがっかりした経験がある。
ソ連崩壊直後、維持費稼ぎのために書店が化粧品や衣料品などの雑貨の販売に力を入れた時期もあった。しかし最近、書店の本の販売が充実してきた。経済改革後、 国家の出版独占体制が崩壊したということで、様々な出版物が出てきた。
外国の雑誌(コスモポリタン、ELLEなど)や翻訳本も増えた。そのほか外国語(特に英語)のテキストやコンピュータの本、ビジネス書が大量に出版されている。本の質も変わってきた。たくさんの本がドイツやスロバキア、スイス、フィンランド、シンガポールなどで印刷されfている。
また、ウラジオ市内で週末ごとに開かれる書籍市にはたくさんの市民が集まっている。書籍市の人気の理由は、出版界の中心である首都から運んできた本の品ぞろえが充実していることだ。掘り出し物を求めて、大勢の本好きたちが集まる。価格も一般の書店より安い。
一方、読書人口が減っているとか、恋愛小説や推理小説など軽い読み物が多すぎるという批判も聞かれる。書店の話では、ロシアの古典文学は従来通り売れているが、新進作家の作品は出ないようだ。確かに、庶民の生活が欧米化し、子供たちの生活にコンピュータゲームが入り込んでいる。読書よりも魅力的な娯楽が増えているのは、世界共通なのだろう。
1997/06/15 JSN 田代雅章
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1997年06月掲載の記事を転載したものです。