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ウラジオ短信

最も心に残る不屈の女社長

私の友人に朝鮮系ロシア人のパクさん(41)という女性がいる。ウラジオストクでアパレル会社を経営する女性社長である。

彼女は、今年最も心に残った素晴らしい女性の1人である。長女の生死をさまよう病気。そのどさくさに起きた商品の盗難事件。追い打ちをかける義母の死去。そして、モスクワで商品代金をだまされる事件。私はこれでパクさんの事業も終わりと思ったほど、彼女は精神的、経済的に痛めつけられた。しかし、彼女は負けなかった。

7月、パクさんの長女オーリャ(18)が突然、意識不明の状態になり病院に運ばれた。地元の病院では治療が難しい、新潟で受け入れてほしいと電話で言ってきた。保健のきかない日本で治療費が問題であった。だが、新潟大学脳神経外科の迅速な対応のおかげで、オーリャの病気は思いのほか早く治り、8月上旬、パクさん親子は喜んで帰国した。

9月、彼女の会社を訪ねると商品がまったくなく、洋服を作っている様子もなかった。パクさんは「洋服を作る生地も盗まれて無い」とポツリ一言。

年齢も私と同じ。ビジネスを始めたのも同じころ。パクさんの作っていた洋服に注目していただけに頑張ってほしいと思っていた。

先週、パクさんを訪ねた。「今日オーリャが誕生日で19歳になったのよ」と、嬉しそうに娘の様子を話した。そして、来年1月には街の中心部に新しい店をオープンするという。

来年はパクさんにとって素晴らしい年になりそうである。

1996/12/15 JSN 田代 雅章

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1996年12月掲載の記事を転載したものです。

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