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ウラジオ短信

危険いっぱい氷上の釣り

ウラジオストクで3月に決まってニュースに取り上げられる出来事がある。それは氷の上で釣りをしていた人が、暖かくなって氷が解け出したために海中に落ちて、最悪の場合には死に至るという悲劇である。

冬の間、ウラジオを取り巻く海は凍ってしまうが、そこで出てくる楽しみとは釣りである。

ウォッカを片手に朝から出かけ、氷に穴を開ける。釣れるものはキュウリ魚。これはワカサギと同じような魚で、キュウリのようなにおいがする。多いときには1日に200〜300匹は釣れる。それらはフライになって家庭の食卓に並ぶこともあれば、帰宅途中に売られることもある。

今年は暖冬だったせいで、3月の上旬から何度となく「氷上の釣り危険・要注意」との警告が繰り返されていた。

ある天気のよい午後、氷の上で釣りを楽しんでいたら、突然強風が襲い、岸から氷の塊が離れてしまった。さあ大変、あわてて岸に走り逃げ切れた人はいいが、氷の上に残されたまま沖へ沖へと流され、20人もの釣り人が氷の上で立ち往生。

岸では黒山の人だかり。幸い近くを航行中の救助船が切り離された氷に近寄り、全員無事救助された。本人もとより、周りの通行人もヒヤッとした。ラジオでも生で報じられ、市民は「ああ、また今年もか」と、冷静ながらも話題にしていた。今年こそは死者が出ずにシーズンを終わってほしい。

1996/03/31 JSN 山本 千津子

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1996年04月掲載の記事を転載したものです。

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