個人の誕生日は、ロシア人にとってお正月や国際婦人デーと並ぶ一大イベントである。
日本の場合、祝われる側は一方的に祝われるが、ロシアは誕生日の当事者がパーティを開いて友人を招待する。この場合、自宅にお客を招いて家庭料理でもてなすのが一般的だ。
誕生日は職場でも祝われる。職員の誕生日が平日でも、お構いなく昼食のときにシャンパンを開ける。
その日の仕事はほとんど半ドンのようなもの。長くロシア人と仕事をしていると、「今日は会社のだれそれの誕生日だから仕事は休み」と言われると、妙に納得してしまうから不思議である。
例えば私の友人の場合、彼女は料理が得意だ。誕生日となるとがぜん腕がなる。何日も前からメニューを考え、お客が来る直前まで台所で奮闘する。
自宅に呼ばない職場の同僚にも、彼女はお茶の時間にシャンパンとケーキを持参する。このように、誕生日がいかに気前よく振る舞えるかが、ロシア人の付き合いの重要なポイントだ。
同時に、大切な人々の誕生日を手帳に控えることも忘れてはならない。ビジネス上も、個人や組織(企業)の記念日はタイミングよく祝うと非常に株が上がる。
大切な取引先の秘書の女の子たちの誕生日を控えておくのは、ビジネスマンとして当然のこと。もしかすると、ロシア人は日本人に劣らず、祝い事には細かいかもしれない。
1996/10/15 JSN 釈囲 美法
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1995年10月掲載の記事を転載したものです。