私はウラジオストクで猫(女のコ)を飼っている。名前はチョコラ。知人からもらった。毛色は黒めのビターチョコである。
こちらでは黒猫は縁起が悪いとされるが、彼女は黒豹のようにしなやかで輝く毛皮をもつ「好運の招き猫」。彼女がいてくれたおかげで私はウラジオで孤軍奮闘できたと思っている。これまで2回ほど(しかも真冬に)失そうしたこともあったが、この度、ウラジオでの任期を終え晴れて彼女は私と日本に行く。
1ヶ月間、このための手続きをした。国外に持ち出す場合、ロシアでは犬だけでなく猫にも「狂犬病」の予防注射(無料)が必要だと初めて知った。
さっそく猫をつれて病院に行く。待合い室では犬や猫を連れたロシア人が順番で待っていた。動物たちのいでたちは、手提げ袋や飼い主の懐の中、シーツに包まれて抱かれて、とさまざまである。
だが、一様にはっきりしているのは、彼らが家族同様、人間同様に扱われ、かわいがられていることであろう。私も、チョコラがまだ小さかったころ、家に置いておくのが忍びなく、懐にいれて外出していた。たぶん、こんなこと日本ではできないであろう。
1996/04/30 JSN 釈囲 美法
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1995年04月掲載の記事を転載したものです。