「わが家には電気も、お湯も、暖房もない」と、昨年12月18日付の短信で報告したが、年末から文明社会に復帰できたので、読者の皆様、ご心配なく。
年末年始、私は日本人の友人宅で年越しそばもお節料理らしきものも食べて、和風正月を満喫した。
ウラジオストクでは毎年、中央広場にモミの木が立てられる。今年のモミの木は郊外の針葉樹林から切ってきたそうだ。
年末のある日、スタッフの一人が「ありゃ、なんだ?」と叫んだ。外を見ると、ワイヤロープでモミの木をぶらさげたヘリコプターが金角湾上空を飛んでいる。ヘリはそのまま湾沿いに飛んで広場上空に到着。上からモミの木を取り付けたのであった。
一方、おおみそかの晩、親しい数人が集まって年を越していたときのこと。またもや「あれは何?」という声で外を見る。
それは素晴らしい光景だった。友人宅の向かいの丘にはマンモス団地が立っている。その団地の家々の窓から、午前零時の時報とクレムリンの鐘の音とともに、色とりどりの花火が発射されたのである。ここでいう花火は、火花ではなく空中に漂う光の玉を想像していただきたい。それに色がついているのである。
私たちは窓辺に駆け寄り、息をのんでこのイベントを見物した。前日積もった雪を背景に、空中を漂う光の玉はまるで画用紙に落とした絵の具のようであった。
1996/01/15 JSN 釈囲 美法
※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1995年01月掲載の記事を転載したものです。