IKEAは組み立て家具と食器等の販売を、ロシアで大規模に展開している。2000年モスクワ一号店を皮切りに、モスクワに3店舗、サンクトペテルブルグ、カザン、エカテリンブルグ、ニジニノブゴロドに各1店舗、既に7店舗を構えている。そのうちモスクワの2店舗は“メガモール”と名付けて各々約200店舗余のテナントを持つ巨大ショッピングモールを経営している。
このモールはフランスのスーパーチェーン店”Auchan”、ドイツのホームセンターチェーン店“OBI”、フィンランドのデパート”Stockmann”などの他、アイススケートリンクを囲む様に、小売店とファーストフード等が並んでいる。フランス通信によると合計250の小売り店舗が入り、敷地面積23万u、2億5000万ドル投資の巨大スケールだ。 IKEA Russiaの社長は「ロシア国内に15店舗以上を展開予定している」と語る。今年9月と10月にオープンしたエカテリンブルグとニジニノブゴロド支店と同規模の店舗を、サマラ市クラスノグリスク地域にも建設予定であるとサマラのコメルサント紙は伝え、更に東へと展開を続けて行くようだ。
モスクワ郊外ヒムキにある“メガモール2”開店の際はいろいろ苦労があったようだ。 当初2004年12月2日に予定していたオープン日は15日にまでずれ込んだ。2週間の遅れの裏には、外国投資家をビックリさせる泥試合があり国際的なニュースにもなった。タス通信、フランス通信他の記事をまとめると、事の発端はこのモールの駐車場建設地に埋められているガスパイプの“安全性の懸念”を巡り、ヒムキ市とモスクワ地方政府の対外経済部はIKEAが無視しているとしたのに対し、IKEA側は安全性に問題はなく、オープンの許可を出さないのは賄賂要求を拒否した事への報復であると当時メディアに対し語っている。問題をメディアに公開した日の遅く、ヒムキ市長やモスクワ地方知事と話し合いの末、IKEAは100万ドルでヒムキ市にスポーツ施設を造る事を約束し、翌日オープンの許可を獲得した。賄賂要求の対象になりそうな問題に対して即座に裁判所に訴え、記者会見で問題を公開し、強欲な役人を追い払ったとあるリポートは伝えている。
週末の買い物客で賑わうIKEAで、最近購入した3部屋60uのアパートの設備を整えている最中と言う、あるご夫妻に話を聞いた。インナさん(28歳、PRコンサルティングエージェンシー勤務)は、いろいろな会社を見てもIKEAのキッチンを備えている事務所が多いと言う。IKEA家具の良さについて「高級家具に劣らないほど洗練されているうえ、スペースを有効に使えるようデザインされていて、値段も高くなく、丈夫」とインナさんが言えば、ウラジーミルさん(29歳、コンピューター会社勤務)も、「2年前今のアパートを借りた時、やはりIKEAのキッチンキャビネットを買った。キッチンは小さいので数個のキャビネットとロシア製の小さいテーブルを置いた。キャビネットはまだ新しい感じで使い勝手も良いが、テーブルはもうグラグラしている」と実際の使用感を説明してくれた。「良いデザインで使いやすい物は友人へのプレゼントにもしている」と積極的に家具選びに参加している様子だった。キッチンだけでなく、他の部屋もIKEA家具で揃えるつもりだそうだ。(2006年10月)