モスクワの中心赤の広場からそう遠くないツベルスカヤ大通り14番地にあるエリセエフスキー高級食品店は、その内装の豪華な装飾でロシアの最も有名な食品店として100年以上も前からモスコビッチ達に知られている。1898年開業でおいしいソーセージを買うならエリセエフスキーと親しまれていたようだ。1930年代にモスクワでパイナップルが買えるのはこの店だけだったそうだ。ソビエト時代は食品店#1と番号がつけられていた。3年前に行った時はあまり買いたいような食品はなかったが、2003年9月に全面改修工事をされ新装オープンし、今やところ狭しと高級食材が店いっぱいに並んでいて、その店内の美しさに観光客が多く訪れる。
モスクワの「グルメブティック」ブームは、去年2月にオープンしたフランスの有名なグルメストアー「Fauchon」が、やはりツベルスカヤ大通りに開店したことで火がつけられた。その2ヶ月後の4月には、サドバヤ大環状道路に大きな店構えの、やはりフランスのグルメストアー「Hediard」が、ノーブィアルバート通りには「Vesna」が、4階建てのデパートとして次々とオープンした。
「Vesna」の地下2階にあるグルメショップは、現代的デザインのガラス張りの建物に入り、エスカレータに乗ると上下4階が吹き抜けになっていて、食品階のある地下2階は現代彫刻を配した大きな丸い池を取り囲む様な店の配置になっている。店員さん達は白のシャツに黒のパンツ又はスカート、店のあちこちに立つ警備員のユニフォームは、ダークグレーのスーツでおしゃれ。近くで働くOLたちが昼食用にパンやサラダ等を買っていた。
これらのグルメブティックで販売する食材の半分以上が輸入食材だと言われているがこの店は80%ほどが輸入品と言う感じがした。目についたのは木箱に入った10cmほどの高さの瓶のバルサミコビネガー、値段を見ると4400ルーブルだった。これらの店で買い物をするのはほとんどがロシア人で、外国人は珍しい。
「Vesna」で会ったイリーナさんは、ここがモスクワで一番お気に入りの店らしく、月に3回ほどこのグルメストアーで買い物をすると言う。彼女は南西郊外に住んでいて、夫婦と娘が一人という家族構成。一回の買い物で使う金額は約2000ルーブル。一般の店では買えないようなハムや肉類を主に買う。「この店の食品は品質がよく、スペインやイタリアの高級食材を多く置いているので好んで買っているの。ロシア製の物とは比べものにならないわ」と言う。「値段もそう高くはないし、上の階で洋服を見て、帰りに食材も買って帰られるのが便利ね。もちろん一般の店でも買い物はするわよ」この日イリーナさんは、数種類の生ハムを買っていた。
近くの鮮魚売り場では日本のデパートの売り場のように氷の上に魚が並べられ、その中に珍しく生のイワシが100グラム110ルーブルで売られていて、鮮度もよさそうだった。(2006年9月)