先日、モスクワの中心地でタクシーを止めようと歩道で手を上げていたら、向こうから黄色のスポーツカーが来た。あの車を止めようと友人と一緒に必死で手を振ったら、運転手はにっこり笑ってVサインを出して走りすぎた。その車はランボルギーニだった。
モスクワの道路はここ数年、世界中の高級車で溢れている。それも超高級車が増えている。特にヨーロッパブランドのブティックや、有名なレストランの周りには各種の高級、超高級車がずらっと並んでいる。ここ1‐2年は大型SUVも人気がある。ボリショイ劇場近くのショッピング街にはポルシェ、メルセデスのSUVをはじめランドローバー、レクサスなどが常に並んでいる。
買い物途中で会ったアレクサンドルさんは、黒のジャガーで奥さんと一緒にダウンタウンへ買い物に来た。話を聞くと、10年前に初めてアメリカへ行った時、ジャガーを一目見て気に入り買ったそうだ。それ以来イギリス車が好きで、現在所有しているのは今日乗って来た2台目のジャガーの他、レンジローバー、タスカンの合計4台。奥さん用には事故等を心配して、車体のがっしりしたSUVのフォードエクスプローラを運転させていると言う。ジャガーを選んだ理由を聞くと、「見た目(デザイン)が良い。エンジンその他は信頼しているのであまりこだわらない」と明快な返事だった。なぜ4台も所有しているのかと聞いたら、「モスクワの冬の寒さに対応出来る様に冬にはレンジローバー、夏はジャガー、タスカンは遊び用と息子が良く使う」と用途に合わせて乗り換えていると言う。近々新しいジャガーを買う予定だそうだ。話を聞いた超高級車に乗っていた人のほとんどが2台以上所有し、1台はSUV型の車を冬用に所有していると言っていた。
最近読んだ通信社の記事によると、イギリス高級車のベントレー社が2003年、モスクワにディーラーシップを初めてオープンした時、ロシア市場用として20台を用意したら40台が売れた。翌2004年は本社から60台があてがわれたが、実際には95台が必要だった。さらに昨年は230台の割当が課せられたが、それ以上に必要となったそうだ。
モスクワ郊外に最近出来た高級ショッピングモールには超高級車のショールームが並んでいる。フェラーリのショールーム前で遇った24歳のビジネスマンは黒のマセラティに乗り、友人の真っ赤なフェラーリのエンジン調整に付き合っていた。マセラティを選んだ理由は「超高級車で周りにあまり走っていないから」だそうだ。彼らも、マセラティやフェラーリは良い気候の夏用で、冬用にはSUVに乗っていると言う。フェラーリのセールスマンは、月平均3-4台売れていると言う。ランボルギーニは年間20台ぐらい売れていると言う。話を聞き終わってショールームから出て来たら黄色のフェラーリが、バリバリとエンジン音を響かせて走りすぎた。(2006年8月)