大学生のディーマ君とその友達に会った。かられはモスクワの中心地にあるブティックで買い物をしている別の友人達を待っていた。このブティックは最近世界中の大都市に出店しているスペインのブティックで、モスクワの若者にも人気があるらしく、店名が入ったバッグを持っている人を良く見かける。ディーマ君によれば、この店は高級ブランドのブティックではなく、値段もそれほど高くないしデザインは若者向けだと言う。でも彼はスポーツブランドのデザインが好きで、この日もロゴ入りのキャップをかぶり、同じロゴのポロシャツにスニーカーを履いていた。最近多くなっているコピー商品は買わず、本物でしかもデザインの良いスポーツブランドのみを買う主義だ。値段は高くても本物は品質や仕立てもよく格好いいからと言う。彼は、服に限らずカメラや電気製品も本物だけを持ちたい、もちろんそれは日本製品だと言い、少しぐらい高くても品質が良い方がよく、シンプルで洗練された日本のデザインが好きだと言う。
そばにいたステファン君は、携帯電話でメッセージのやり取りをしながら話をしている。ブティックから出て来た友人達も加わった。皆1ヶ月に平均300?400ドル程の小遣いを使うと言う。ロシア全体の平均月給が約300ドルと言われるが、それ以上の小遣いをモスクワに住む彼らは使っている。そのほとんどを電話代、飲食代、服等の買い物に使うそうだ。ディーマ君はじめ全員が親に学費、住宅費、小遣いを出してもらい、誰もアルバイトはしていない。アルバイトをしても収入は少ないし、勉強と遊びの時間も減るし、お金のためにあくせく働くのは嫌だと言う。
モスクワで大卒生の初任給がどれくらいもらえるのか聞いてみたら、月給は1000ドルを少し上回るくらいと言う。ディーマ君が分かりやすく説明してくれた。ロシアの会社では、ボスに気に入られ、信頼されるようになったら、給料はどんどん上がる。しかしそれまでは安い給料で我慢しなければならない。本職以外にも仕事をしている人がほとんどで、この副収入が生活費と交遊費を支えると言う。ディーマ君も、就職したらコンピュータで出来る仕事を副業にしたいと考えている。彼ら全員、大学で世界経済を学んでいて、ディーマ君、アリョーシャ君は卒業したら銀行か金融関係の企業に就職したいという。ステファン君は広告代理店に就職したいそうだ。グループで唯一の女性ダーシャさんに就職希望を聞いてみたら、「私は就職なんかしないでお金持ちの男性と結婚し、好きな事をして暮らしたい」と言って周りの男性達を見てにっこり笑った。(2006年6月)