夫/アレクセイ(38歳) 軍施設警備兵
妻/タチヤナ(38歳 理容師
長女/マーシャ (16歳)
次女/ワレリヤ (7歳)
タチヤナとアレクセイが知り合ったのは、彼女が勤めていた理容室。散髪に訪れたアレクセイが彼女に一目惚れして、定期的に髪を切ってもらいに行くようになったのだ。アレクセイは床屋通いを何度か続けた後、思い切ってタチヤナにデートを申し込んだ。背が高く、男らしく、ハンサムなアレクセイを、タチヤナも気に入った。ふたりは一年間交際を続けた後に式を挙げ、結婚から一年後に長女のマーシャが誕生、9年後には次女のワレリヤが生まれた。
産休から復帰すると、タチヤナは自宅から近い場所に新しい職場をみつけ、再び理容室で働くようになった。アレクセイの軍勤務は「1当直日3休日」体制、つまり一昼夜24時間の当直勤務の後、3昼夜72時間が休みとなっている。タチヤナはほとんど終日仕事ずくめで、しばしば土日にも仕事が舞い込むため、こうした勤務形態はアレクセイにとって非常に都合がよい。勤務のない時、彼は次女の養育と家事を引き受け、娘をバレエ教室や美術教室に連れて行っている。また娘と一緒に自分でも英語を勉強している。
長女のマーシャは「ウリープカ」(※今年26周年を迎えるウラジオ市の著名な舞踏アンサンブル。日本や韓国、米国への客演も行っている)で、小さい頃からバレエやダンスを習ってきた。彼女は現在、自分が通っている学校でダンスのサークルを主催し、低学年の子供たちにレッスンを施している。マーシャはここから幾らかの謝礼を受け取っており、これは彼女が公演に出演する際のコスチュームの縫製費に充てられている。
一家の家計は主にタチヤナの収入によって支えられている。彼女は理容室で月に2万ルーブルを稼ぐ他、常連客を何人か持っていて、彼らは一家の自宅まで散髪を頼みにくる。この副収入がひと月に大体5000ルーブルである。
アレクセイの月給は1万2000ルーブルで、夜勤当直に際し、多少の手当が出る。給料はわずかであるが、勤務シフトに融通が利き、育児や家事に時間を割く事ができる。また毎年50日の休暇が与えられ、特典として家族全員分の交通費が支給される。夫妻にとってはうれしい限りだ。
ポポフ一家は二間のアパートに暮らしている。公共料金は一ヶ月大体3000ルーブル、食費に1万3000〜1万5000ルーブルかかる。アレクセイとタチヤナは時折、夫婦ふたりでカフェやレストランに行くのを楽しみにしている。ワレリヤが通っているバレエスクールの月謝は6000ルーブルである。うまくお金を節約できた時は、一家は高価な買い物や、夏季の休暇に備えて貯金を心がけている。