夫/アントン(62歳)機械技師
妻/タチアナ(61歳)主婦
長女/クセーニア(28歳) 教師
次女/オリガ(20歳)大学生
アルトホフ一家はナホトカに住んでいる。将来、娘の家族と一緒に住めるようにと、夫妻は大きな一軒家を建てた。しかし現在は、2人の娘は勉学のため家を出ていて夫妻だけで暮らしている。もっとも、クセーニアはいち早く家族と離れて生活してきた。幼い頃からバレエに励み、13歳でペルミにあるバレエ学校に入った。その後、サンクトペテルブルグのバレエ学校でバレエの教師の教育課程を履修し、今年、卒業予定だ。彼女はフィンランド人男性と結婚し、今のところ、極東の両親の元へ戻る予定はないという。
次女のオリガも今年、ウラジオストクの大学を卒業する。大学では、海運輸送を専攻した。オリガは、一生涯、船の上で働き続けた父アントンの跡を継ぐと言えるかもしれない。オリガは卒業後、ナホトカに戻るつもりである。というのも、船会社と契約で研修し、その後互いの条件が合えばそこに就職する予定があるからだ。そして何より、決して大都市ではないが、住みやすいナホトカをとても気に入っているからこそ、地元に戻るのである。
そういうわけで、アルトホフ夫妻は現在2人きりで住んでいる。一番家に居る時間が長いのは妻タチアナで、育児、その後子供が手を離れた後は、年老いた両親の世話と、これまで専ら主婦業を続けてきた。今も基本的に家事だけに携わっている。夫アントンは、陸より海で過ごす時間の方が長いくらいで、現在は船の機関士長を務めている。
アントンの月給は約4万ルーブル(約18万円)で、彼の稼ぎだけで十分に一家の家計が賄える。タチアナが一人で家に残っている時は、最低限の支出で済む。家と生活に必要なものはとうに購入済みなので、主な出費は維持費だけである。季節にもよるが暖房、水道、光熱費、電話代等が月に2000〜8000ルーブルかかる。アントンが家にいる時は、2人分の食費が約5000ルーブル、ペットの犬2匹と猫2匹の世話代が約1500ルーブル。
両親は娘たちに、大きな買い物や休暇に使うようにと現金を渡すことがあるが、ごく稀である。というのも、娘たちが自立しようと努めているからである。姉は多少お金に余裕があるが、妹も親に頼らないように努力している。オリガは5年間好成績で高額の奨学金をもらっていて、研修でも稼いでいる。両親は2年前、次女の欲しがっていた車を買ってやった。オリガは小さい頃からハンドルを握らせてもらうのが大好きだった。彼女は以前も、休みになると、ウラジオから地元に帰るようにしていたが、車を買ってもらったおかげで、帰省するのがさらに楽しみになった。(2007年02月)