夫/セルゲイ(39歳)運転手
妻/オリガ(36歳)数学教師(秘書)
長男/アルチョム(12歳)
ポジャロフさん一家はウラジオストク郊外で暮らしている。一軒家と、果樹やベリー類を育てる小さな菜園がある。オリガは畑仕事があまり好きではないので、夏の間だけ食べられればいいだけの、必要最小限の野菜しか作っていない。他の家庭のように冬の分まで野菜を育ててはいない。とはいえ、ほんの数軒先に住んでいるオリガの両親が、彼らの分まで貯蔵野菜(漬物など)を作ってくれている。
オリガとセルゲイは、結婚して14年になる。オリガは息子が生まれてからほどなく退職した。息子の世話をするためだ。幼いアルチョムは体が弱く、幼稚園に通えなかった。オリガは息子に自ら読み書きを教え、子供の成長を支援するグループや、後にはスポーツ教室へ息子を車で連れて行った。今でもアルチョムは格闘技を習い続けていて、よく大会に参加している。レッスンは無料だが、道着代と大会旅費は自分持ちである。時には、一家はトレーナーの先生と一緒に、どの大会に参加するかを懐具合と関係なく決めなくてはならないこともある。
セルゲイは以前は、よく長期出張に行っていた。当然そのような勤務体制は一家にとって都合がよくない。セルゲイの不在時、オリガとアルチョムは、父の帰りを一心に待つばかりの日々だった。しかし、セルゲイは稼ぎが良いので、自分の夢のひとつを叶えようとしている。3年前から自分の手で新しい家を建てているのだ。親戚と友人たちも出来る限り手伝ってくれている。1階部分と天井と屋根はほぼ完成した。まもなく、綺麗な木造の階段を造り終える。セルゲイは設計から施工まで全てを自分で考えて自分で作業している。幸いにも、今は市場に行けばいろいろなデザイン、材質、価格帯の建築資材が豊富に揃っている。
オリガはこの秋からまた働き始めた。息子は成長し、かなり自立して、もう母親の学校やスポーツ教室への送り迎えは必要なくなった。オリガの専門はエンジニアだが、その分野で職探しをすることはなかった。なぜなら、これだけ仕事から離れていては専門知識などまるで覚えていなかったし、まして、企業が経験のない者を雇ってくれるはずもないからだ。そこで、ある小企業の秘書に収まった。セルゲイも転職し、もう出張はない。
家計は夫婦の給料で賄っている。セルゲイの月給は1万5000ルーブル、オリガは7000ルーブル。なるべく倹約している。家は完成までほど遠いし、残りの建築費にいくらかかるか分らないからだ。月々の決まった出費は、電気代約400ルーブル、水道料金300ルーブル、食費5000ルーブル、学校諸経費300ルーブル、交通費および自動車の維持費約1500ルーブルとなっている。
1月からオリガは1万ルーブルに昇給するし、セルゲイもボーナスが出る。これらは全て家の建設費に充てることにしている。(2006年12月)