夫/レオニード(47歳)医師
妻/オリガ(42歳)医師
長男/アレクセイ(19歳)大学生
ヤルツェフさん一家はウラジオストクに住んでいる。レオニードとオリガ夫婦は二人とも医師で、科こそ違うが同じ病院に勤務している。二人は平日はもちろん休日でも、家にゆっくりいられることは夜間ですら、ほとんどない。それで、息子のアレクセイは、小さい頃から自分のことも家事も、ほとんど独りでこなしてきた。オリガがせめて数日間でも手料理を食べさせようと努めたとしても、どの道、食材の買出しや、部屋の掃除はアレクセイが担当することが多い。かれには両親が大事な仕事をしているということが、よく分かっている。今ではアレクセイ本人も、大学の勉強を頑張っている。両親と同じ医学の道を志しているという訳ではないが。かれが選んだのは、技術分野である。週に何日か、アルバイトで、家具工場でデザイナー見習いをしている。ここでの仕事は将来プロとして働くための、良い研修になっている。
一家の収入は、夫婦が支えている。二人の平均月給は約1万7000ルーブルで、アレクセイのそれは、7000ルーブルである。3人家族が暮らしていくには、これで大体十分である。
3人が暮らすアパートは3部屋。自動車とガレージもある。自動車は主にアレクセイが乗っているが、自分の用だけでなく、両親に頼まれて運転手を務めることもある。
数年前に、畑仕事をやってみようとダーチャを購入したのだが、その2年後には手放してしまった。なぜなら、結局そんな時間はどこにもなく、畑は雑草だらけになってしまったからである。
支出が収入を上回ることはほとんどなく、むしろ倹約できている。家賃に1000〜3500ルーブル、食費におよ そ6000ルーブル、自動車の維持費に3000ルーブルを費やすのみである。
レオニードとオリガは、仕事があまりにも詰まっていて、もうここ何年も休暇をとっていない。けれども、そのための貯金を続けてきたおかげで、かなり贅沢な海外旅行が出来るくらいの金額がたまった。今年こそは休暇をとってゆっくり旅行しようという計画もあるのだが・・・実現するかどうかはまだ分からない。
アレクセイは今年の夏、大学の研修プログラムを利用して、米国へ行ってきた。かれにとって初めての外国だったが、大変よい体験ができた。かれは夏休みを満喫しながら、初めて見知った国や、自分の知っているのとは別の生活スタイルや人々などの印象を心に刻みながら、お金まで稼げて、しかも英語の実地練習ができた。稼いだ金の一部で、新しいパソコンを買った。今、アレクセイは、米国のどこかの大学に2年ほど留学できないものかと構想を練っているところだ。(2006年09月)