夫/ウラジーミル(59歳)工場技術部長
妻/ナターリヤ(57歳)年金生活者
長女/エレーナ( 30歳)
会社員
長男/デニス( 20歳)
大学生
コトフさん夫妻は、ウラジオストク市の出身である。ウラジーミルは学校を出てからずっと同じ工場に勤めており、今では技術部長を務めている。20年程前、モスクワにある工場に頻繁に出張し、そこの工場長から技師長として来てほしいと誘われた。この工場長はウラジーミルのことを随分と気に入ってくれて、当時としては破格の好条件を提示してくれた。そこで彼は、妻と長女のエレーナを連れて、モスクワまで下見に行ったのである。しかし家族全員が口を揃えたのは、「海がない」という感想であった。海がないところで暮らしていくことはできないと考え、ウラジーミルはこの提案を丁重に断ったのである。
その2年後、事件が起きた。ウラジーミルの弟が妻とともに急逝し、生まれたばかりのデニスが1人残されたのである。夫妻は迷わずデニスを養子として引き取った。デニスはその後、コトフ家の一員として育てられ、大学生になった。しかし、彼は大学2年になった頃からほとんど大学に行かなくなり、家に籠るようになったのである。今のところ退学は免れているものの、卒業だけはしてほしいと、夫妻は懸命に説得している。
ナターリヤは2年前に定年を迎え、今は家事に専念している。長女エレーナは、大学4年の時に結婚し、卒業後夫ともにノボシビルスクに引っ越した。しかし3年後、離婚して両親のもとに帰ってきたのである。現在は民間企業に勤め、経理を担当している。
ウラジーミルの月給は1万8000ルーブル(約6万8400円)、エレーナは約1万ルーブル(約3万8000円)である。ナターリヤの年金はこれまで一度も手をつけたことはなく、全て貯金している。食費は約6000ルーブル、光熱費など住宅の管理費が1000〜3500ルーブル。デニスの学費もあるので、生活は決して楽ではない。一家が暮らしている3DKのアパートは、4人で暮らすには十分な広さである。猫を2匹飼っている。(2004年08月)