夫/ニコライ(62歳)
妻/リュドミラ(60歳)
ニコラエフさん夫妻はアルセーニェフ市で年金生活をしている。夫妻には2人の娘がおり、2人ともすでに結婚し、独立した家庭を築いている。長女のタチヤナは夫と2人の息子とともにダリネゴルスクで暮らしているが、次女のスベトラーナの家族は、夫妻の近くに住んでいて、互いの家を頻繁に行き来している。スベトラーナの息子、つまりニコラエフさん夫妻の孫に当たるアントンは、祖父母に育てられたと言っても過言ではなく、今でも夏場はダーチャで一緒に過ごしている。
夫妻は、年金収入だけで暮らしているので、生活が楽なわけではない。けれども、アルセーニェフのような地方都市で、年金生活者が仕事を見つけるのは難しいのが実情である。夫妻はともに、工場に長年勤務していた。リュドミラは定年まで勤め上げたが、ニコライは、年金の支給が始める3年前にリストラされた。年金が出るまでの間、他の仕事が見つからなかったので、失業保険だけで生活したのである。このため、数少ない資産であるダーチャで、野菜や果物をたくさん栽培し、それをリュドミラが地元の市場で売って、生計を立てていたのである。アルセーニェフの市場では高く売れないので、月に数回、ウラジオストクまで売りに出かけた。市場で売り始めたばかりの頃は、恥ずかしくて、上手く商売ができなかったが、商売経験の豊富な友人が手伝ってくれたおかげで、徐々に稼げるようになったという。
その後、娘たちも独立し、今では経済的に夫妻を助けてくれるようになり、アパートの光熱費や管理費の補助をもらえるよう申請したので、生活がずいぶん楽になった。年金の支給額も徐々に良くなってきているという。現在のリュドミラの年金は月額2200ルーブル、ニコライは1800ルーブルである。このため、無理に商売をする必要はなくなったので、今では、値段が高い時期にだけ市場に売りに出かける。これで年に1万〜1万5000ルーブルくらいの収入になるのだと言う。
ダーチャで作れるものは、何でも作っているので、一家の食費は月に1000ルーブルほど。それ以外に、アパートの管理費が600ルーブルである。夫妻は、孫たちのためにお金を貯めるために倹約を心がけている。(2004年02月)