母/リュドミラ(48歳)清掃員
長男/ワジム(27歳)警備員
長女/エブゲーニヤ(14歳)
中学生
一家は12年前に離婚したリュドミラの夫の所有していた2部屋のアパートに住んでいる。毎月公共料金と電気料に1万4000ルーブル(約2600円)支払っている。リュドミラの給料は、銀行の掃除で得る給料が36万ルーブル(約8200円)、労働組合委員会の掃除料22万ルーブル(約5000円)、運送会社の掃除料27万ルーブル(約6200円、現在未払い)と、ワジムが運送会社の警備員をして得ている給料(月給76万ルーブルだが、'95年10月から未払い)、合計月58万ルーブル(約1万3000円)で3人家族の家計は賄われている。必然的に、リュドミラは何でも節約しなければならない。彼女は実際食費まで切り詰めて、肉(買えてもせいぜい1キロ9500ルーブルの鶏の腿肉)も果物も菓子類も買わない。
ワジムはやむなく母から日に7000〜1万ルーブルの昼食費と交通費をもらっている。ワジムに新しい仕事が見つかる可能性はない。ワジムは大学を出ていないし、外国語などの特技もない。若い頃スポーツに熱中した彼は有望なサッカー選手であったが、サッカー場で大けがをしたために続けられなくなった。
母リュドミラは、年頃の娘エブゲーニヤに恥ずかしくない服を買うための金を貯める努力をしている。エブゲーニヤは苦しい家計状況をよく理解してはいるものの、自分の流行遅れでデザイン性のない服を学校で時々笑われるのがたいそう苦痛である。今年の冬はまだ、母親の古いフェイクファーの帽子をかぶっているが、リュドミラは来年はエブゲーニヤはもうこの帽子をかぶらないだろうと思っている。それでリュドミラはエブゲーニヤのために、冬のコートを買うためのお金約150万ルーブルをやりくりして貯めている。(1996年03月)