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農業部門への融資不足で沿海地方の穀物生産量低迷の不安

2008/11/10 週刊『ダーリニ・ボストーク通信』 774号

  2008年は世界的に穀物豊作の年となった。ロシアも例外ではなく、1億d以上という記録的な収穫量に恵まれ、主な収穫地では大量の穀物を倉庫に保管しきれないというインフラ問題が発生している。しかし、沿海地方では、これとは正反対の問題が起こっているようである。銀行による融資の不足から、農業従事者は必要な機材の購入や生産量増加のための投資を行うことが出来ず、穀物生産量の低迷が懸念されている。

◇収穫量自体は通年と変わらず:さらに自給率の向上が目指される
2008年9月、沿海地方では早播きの穀物の収穫を終えた。今年の沿海地方の小麦、大麦、燕麦の収穫量は11万5600dであった。これは沿海地方にとっては普通の数値である。
また、沿海地方ではソバとコメの収穫も終了した。2008年、コメの作付け面積は昨年の約1.5倍に増えた。沿海地方行政府農業局農業植物栽培課のクルコト課長の指摘によると、沿海地方の住民の食事のなかでコメが占める割合は非常に高い。将来の課題は沿海地方におけるコメの需要を完全に満たし、輸入をしなくともよいようにすることである。

◇銀行の貸し渋りが農業生産者に打撃
しかし、沿海地方の農業生産者は生産拡大計画の修正を余儀なくされる可能性がある。良質の穀物を収穫するための新しい機械が沿海地方には足りない。企業が新しい機械を必要な分だけ手に入れることが出来ないからだ。企業は燃料を購入する資金もない。
穀物生産者は、自らが購入しようとしている機械を担保に融資を受けることが難しくなっている。銀行は融資額を減らし、利益をもたらさない沿海地方の農業企業に対し、ますます融資を拒否するようになってきている。勿論、国も農業発展のために資金を提供しているが、沿海地方では有望な穀物生産者が国の支援、資金を得られないことがよくある。

◇沿海地方では穀物生産量低下の影響でパン不足が懸念される
このような状況は2009年の穀物生産量に影響する可能性がある。穀物生産量の伸び悩みは、製パン業者などの穀物加工業者、さらには消費者にも悪影響を及ぼしうる。
沿海地方には小麦を加工する企業が1社しかない。沿海地方に十分な量の穀物が供給されなくなったら、パンの価格は再び上がり、質は落ちるとこの企業の取締役は考えている。ウラジオストクでは10万dまでの穀物を収容できる大型倉庫が空の状態である。

◇沿海地方独自の穀物備蓄を
実業家たちは、沿海地方には穀物倉庫、加工設備、専門家と穀物産業をうまく発展させるための前提条件が揃っていると言う。ただ、一番重要な穀物がないのだ。
穀物産業で働く人々は、この状況の唯一の解決法は沿海地方独自の穀物備蓄にあると見ている。しかし、沿海地方の小麦製造業者、製パン業者は自らの力で穀物の備蓄をすることは出来ない。それは非常にコストがかかる。彼らは沿海地方行政府とダリキン知事の援助を期待している。しかし、2009年初めに任期が切れるため、ダリキン知事は今のところ農業生産者や製パン業者の要望に反応していない。
(週刊『ダーリニ・ボストーク通信』774号より抜粋)




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