フィナンソブイエ・イズベスチヤ 2007/07/04
ロシアでは2015年までに、テレビ放送がアナログからデジタルに全面移行される。白黒からカラー放送に移行して以来の大変革であるが、移行にむけた準備はなかなか進んでいない。デジタル放送への移行にあたって最も重要なのは、視聴者に不利益をもたらさない事だ。また放送業界関係者も、面倒の生じないことを願っている。
全てが鮮明に
デジタル放送への移行の必要性について、今日、異議を唱える人はいない。“デジタル化”はもう決まったことだからだ。これは、役人の単なる思いつきなどではない。最大の理由は、ロシアの放送電波網のひどい技術状態だ。数十年前に構築されたアナログ放送網は抜本的に近代化する必要があり、また受信ができない地域は、遠隔地を中心に国内1000ヶ所に上っている。こうした地域の住民は、有償のサービスでも利用しない限り、テレビを見ることはできない。また大都市には10〜20のチャンネルがあるものの、周波数帯は既に満杯であり、将来的にチャンネルを増やすこともできそうにない。
問題を地域レベルで解決するのは、屋根の雨漏りにつぎをあてるようなものだ。新しいものをつくるには金がかかるが、はるかに長持ちするし、より快適でもある。デジタル放送への移行は手間も資金もかかるが、それに見合うだけの結果をもたらすことだろう。数年後、テレビはインターネットや電話と接続し、双方向サービス、ノイズのない、高画質、高音質の放送が提供されることになる。テレビ番組は移動交通機関やモバイル端末で視聴できるようになるが、何より、最も重要な点は、2010年までに(地域を問わず)10以上の、2016年までに35以上のチャンネル放送が視聴できるようになる事だ。情報へのアクセス手段に関する大都市と遠隔地の住民との不公平が解消されることは、文化上の革命となるかもしれない。
低所得者への配慮
デジタル化物語のヒロインとなるのは、村で暮らす“おばあさん”である。視聴できないチャンネルがあり、かといって特別な装置を買うようなお金もない。デジタル放送への移行プログラムが念頭に置くのは、そうした低所得者への対応だ。
テレビ放送改革の政府委員会を率いるメドベージェフ第一副首相のみならず、テレビ業界の関係者、電機メーカーにとっても懸案の事項だ。お年寄りにも、数多くのチャンネルを高品質で視聴する権利が与えられなければならない。その点では一致していても、デジタル放送を受信するには、各家庭が4年以内に、デコーダー(変換装置)か、デジタル放送に対応したテレビを購入する必要がある。政府予算からこの支出がなされるのは低所得者に限られるので、業界は視聴者に対してこうした機器を購入するよう説得しなければならない。また政府が遠隔地の住民に機器を分配するにあたって、横領や転売をどう阻止するかも不明瞭なままだ。
国家テレビラジオ放送協会(NAT)副会長を務めるエレーナ・ズロトニコワ「TVセンター(*放送局名)」副社長は「デジタル化は放送局や技術者のロビー活動によって生じた気まぐれではなく、全国規模の展望に基づいたものです。情報・説明活動に真剣に取り組まなければなりません」と述べる。
しかし今のところ、視聴者自身、デジタル放送が何なのかよく分かっていないのが実情だ。調査会社「ビデオ・インターナショナル」のアンケートによると、「デジタルテレビ放送」について知っていた人は47%しかおらず、そのうち92%の人はその長所を「高画質・高音質」と答えたが、単に他の利点について知らなかったのでは、ということも大いにあり得ることだ。