ロシイスカヤ・ガゼータ 2007/06/26
経済発展貿易省が策定した「社会経済発展の長期構想」によると、ロシア経済は2020年には次のような水準になると予測されている。
・中間層と呼び得る層が全国民の半分を超える(現在は多めに見て約20%)
・平均所得は1000ドル(現在は約400ドル、約2.5倍)
・実質可処分所得は現在の1.4倍に上昇し、約2万8000ルーブルとなる
・年金の月額は300ドルに上昇(平均所得の30%。なお、現在の年金支給水準は平均所得の25%)
・医療費が現在のGDPの3%から6-7%に上昇
ロシア科学アカデミー経済研究所エブゲニー・ゴントマヘル・センター長は、経済省の予測の“甘さ”や“不備”を指摘しつつ、国民生活の将来像を次のように述べている。
「平均所得1000ドル」は、あくまでも“平均”であり、職種によって当然、開きがある。現在、高給取りと言われる職種は、石油やガスなど、エネルギー業界で、一方教育、医療、文化に関係する職業は、薄給の典型である。また、公務員の給与をこの水準にまで上げられるのか、疑問だ。
現在のように、石油ガス、鉱物資源の輸出に依拠した経済システムでは、この“格差”は縮まらない。技術革新や新たな産業の創出を通じて産業構造を変えていく以外に方法はない。
また、所得を上げるのだから、当然、労働者の生産性も向上させなければならない。所得の伸びが2.5倍であるなら、労働生産性もそれ以上でないと机上の空論となってしまう。
可処分所得についても、今後さらに、各種公共料金の値上げや税負担の増加が見込まれる。経済省の予測は楽観的だと言わざるを得ない。
最後に医療の問題である。2020年に医療費が対GDPで6-7%と予測されているが、本気で平均寿命を70歳にまで上げたいのであれば、この数値は低すぎる。ロシアは飲酒・喫煙率が高く、疾病率、死亡率も一向に改善されていない。また、平均寿命が伸びれば、自ずと医療費が膨らみ、働く世代の医療費の負担が増えるのは目に見えている。
以上の点を考慮すると、経済省が策定した今回の予測は、与えられた課題に答えるものとは言いがたい。経済省はより現実に即し、より客観的な予測に作り直す必要があるのではないか。