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国際に関する解説集

1.ロシア・中国間の「東部国境」画定

ロシア-中国間の「東部国境」とは、モンゴルの東端から北朝鮮との国境に至る4300kmにわたる国境線を指すが、この東部国境画定の原則を定める旧ソ連-中国国境協定は、1991年5月に締結されている。その後、この協定に基づく具体的な国境の線引き作業が進められ、係争地域についても両国間の難交渉を経て合意が成立し、多くの紆余曲折のあと1999年までに3地域を除くすべての国境が画定され、具体的線引き作業も終わっていたが、2004年まで、ハバロフスク近郊のボリショイ・ウスリースキー島とタラバロフ島と、東シベリア・チタ州のアルグン河に浮かぶボリショイ島が未画定となっていた。

2004年10月のロ中首脳会談で、これらの島の帰属を定める追加合意文書が調印され、ボリショイ・ウスリースキー島は二等分され、その西半分は同島西側の小さなタラバロフ島は共に中国側に帰属することが決まった。2005年5月にはロシア議会がこの追加協定を批准している。これにより、これまで実効支配していた領土を中国に引き渡すこととなったため、地元住民や右派団体の反発を招いたが、大きな騒動にはならなかった。

2.中国とロシアがアムール河に水力発電所建設を計画

中国とロシアがアムール河に水力発電所を共同建設する計画が出てきた。3月22日付で、アムール州のテレビ局「アルファ・カナル」が伝えたところでは、この計画は、両国が共同で策定した「アルグン河及びアムール河国境流域水資源総合利用構想」に基づくもので、2年後にはヒンガンスキー厳正自然保護区(ザポベドニク)から数キロ離れた場所で工事が開始される。

建設に反対するアムール州の環境団体などによると、水力発電所の建設により、自然保護区が水没し、いくつかの地区も沼の底に沈むという。アムール河の主流域の6ヶ所にダムが建設される計画であることから、環境団体はこの計画そのものに強い懸念を表明している。

世界自然保護基金(WWF)極東支部のスベトラーナ・チトワ広報担当によると、ロシアは、中国から働きかけに応じてすでに前述の水資源利用構想に500万ルーブルを拠出し、さらに連邦予算から1200万ドルもの資金を出すという。チトワ女史は「ロシア極東に、新しい発電所など必要ない。中国にとって必要なだけ。中国の電力需要は逼迫しており、石炭を主原料とした火力発電による大気汚染は深刻な問題となっている。アムール河に水力発電所を建設すれば、こうした問題をクリアできるがゆえに、ここまで積極的にロシアに圧力をかけてきているのだ」と強く非難する声明を出した。

3.韓国企業代表団が東シベリア送油管用の鋼管供給を「トランスネフチ」に打診

2月22日、駐ロ韓国大使館付のエネルギー問題担当官を団長とする韓国企業代表団がOAO(公開型株式会社)VNIIST(全ロパイプライン建設・運転研究所)を訪問し、「東シベリア-太平洋(ESPO)」パイプライン建設に用いる鋼管の入札に参加する条件について打診した。

VNIIST広報課が発表したところによると、この韓国大手企業代表団には、鉄鋼、鋼管および接続部品を生産する次の大手企業の代表者が参加していた:SeAH Steel, MIJU STEEL MFG, SUNG IL;STELL FLOWER;CHANG WON BENDING;Daewoo Internetional;KOSA。代表団のリーダーを務めたブ・ヤンホSUNG IL社長は、韓国側には溶接管400万dを含む700万dの鋼管を生産する能力があり、これはロシアの生産能力を上回ることを強調した。ロシア側は、これまで、「トランスネフチ」のプロジェクトで韓国製鋼管が使用されたことはなく、韓国の鉄鋼・鋼管企業の能力に関する情報は文献や学術論文を通じて入手していたにとどまると指摘し、韓国側各社にVNIISTでそれぞれの企業の内容とその製品のプレゼンテーションを行なうよういい要望した。

4.中国からロシアへの投資

中国の大型投資プロジェクトの地域別配分:サンクト・ペテルブルグ:1プロジェクト− 12億4000万ドル、モスクワ:1プロジェクト−3億0000万ドル、チタ州(東シベリア):1プロジェクト−6億0000万ドル、ハバロフスク地方:5プロジェクト−3億4500万ドル、ユダヤ人自治州:2プロジェクト−5350万ドル、沿海地方:3プロジェクト−2億8910万ドル、マガダン州:5プロジェクト−8000万ドル。

中国から極東・東シベリア(チタ州)への投資が増えつつある。サンクト・ペテルブルグとモスクワには、巨額の投資が計画されているが、その対象は住宅と商業施設の建設である。これに対し、上記の極東・チタ州への投資計画は、主に生産部門に向けられている。チタ州では、中国資本によりパルプ-製紙工場の建設が進められており、ハバロフスク地方では新聞紙製造と木材加工を行う複数の工場の建設が計画されている。沿海地方の「ポグラニチヌイ-綏芬河(スイフンヘ)国境地帯通商・経済協力区(PTEK)」プロジェクトは、沿海地方-中国・黒龍江省の国境地帯に貿易だけでなく生産活動と文化交流も行える総合施設を建設する内容であり、総投資額は12億ドルに上ると見積もられている。マガダン州では、中国資本は、褐炭の採掘に乗り出そうとしている。

5.ロ中間のビザなし団体旅行の制度も近く廃止か

沿海地方と中国の間では現在、政府間協定に基づき相互にビザなし団体観光旅行が行なわれている。しかし、このビザなし団体旅行は、中国の違法移民が増える原因になっているとする見方が有力である。この関連で、国境管理の厳正化を目指す流れの中でビザなし団体旅行もやがて廃止されるとの観測が出てきている。

現行制度の枠内でもすでに、ビザなし団体旅行をより厳しく規制しようとする動きがある。ロシアにビザなしで入国した中国人旅行客の滞在日数の上限は、現行では1ヶ月である。しかし、中央のメディアによれば、先ごろ連邦観光旅行局のV.ストルジャルコフスキー局長は、この上限を15日にまで短縮する案を準備している旨を言明した。同局長は、近い将来ビザなし団体旅行の制度そのものを廃止する可能性を示唆している。

旅行社筋は、ビザなし団体旅行が廃止になれば、ロシア-中国間の観光旅行客は激減すると予想している。中国人がロシアのビザを取得するには150ドルの出費と2週間の時間が必要である。一方ロシアから中国を訪れる観光客は、年間約80万人。特に人気を博しているのは、団体で中国に1日だけ買い出しに行くショッピング・ツアーである。しかし、中国のビザを取得するとなれば、50ドルもの費用がかかる。

2006年後半に開催が予定されている高レベルのロ中会議では、この制度の存廃の問題が重要議題のひとつとなると予想される。

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