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外国自動車メーカーに対する優遇措置の条件が厳格化 

 外国企業が自動車の生産をロシアで行なう場合に、一定の条件を満たせば税制上の特典を付与される措置(工業アセンブリー措置)が改正され、3月1日以降、新たに申請を行なう場合は、従来よりも厳格化された基準が適用されることになった。これに対し、Volkswagen(VW)やFiatはプーチン首相に陳情書を提出するなどして、見直しを求めているが、ロシア政府がこうした声を聞き入れる可能性は低いとみられる。したがって、今後進出を検討しているメーカーには従来よりも高いハードルが設定されたことになる。現地メディアの報道をまとめた。

優遇措置を受けるためには年産30万台が必要

 工業アセンブリー措置とは、ロシアで工場を立ち上げたほとんどの外国の大手自動車メーカー(トヨタ、Ford、VW、GM、Fiat、PSA/三菱など)が利用しており、有効期間は8年。主な変更点は下記の表のとおりである。

表:工業アセンブリー措置に関する協定の主な変更点*

*ロシアNIS貿易会『ロシアNIS調査月報』2011年4月号、73〜74頁をもとに作成。上記以外に細かな規定はあるが、省略。

 既にロシアに進出しているメーカーが既存の協定を延長する場合の基準も厳格化され、協定発効後3年以内に既存の工場を年産35万台以上にすること、生産の現地化率を1年で35%、2年で40%、3年で45%、4年で50%、5年で55%、6年で60%とすることが求められる。
 これに加え、セミノックダウン(SKD)方式による生産台数の割合が全体の5%以下に制限されることも外国メーカーの反発を招いている。極端な例で言うと、これまで多くのメーカーが、ほとんど完成した車を部品として輸入し、「タイヤとハンドルをつける」だけで組立と称していたこともある。こうしたやり方については、規制を設けるべきだとの意見が出ていた。
 ただし、今回厳格化された基準のうち、生産現地化率の引き上げやエンジンやトランスミッションの現地調達については、ロシア国内での生産能力が十分でなく、現実問題として、実現が難しいとの指摘もある。今後、この問題を管轄する産業商業省や経済発展省がどのような判断を下すのかが注目される。

価格を武器にアジア勢が市場を奪えるか
 
 こうした中、前週(3月第4週)は韓国、中国、台湾などアジア勢によるロシア現地生産に関するニュースが飛び交った。
 まず、韓国の起亜自動車(Kia)がTagAZ(タガンログ自動車工場)と共同で現地生産を計画していることが明らかになった。TagAZは最大の債権者であるズベルバンクの管理下に置かれており、経営再建を図っている。TagAZは現在、韓国の現代自動車や中国の比亜迪汽車(BYD Auto)などと提携し、外国メーカーの生産工場となっている。
 中国の北京汽車(BAW)もウリヤノフスク州で合弁企業を設立し、オフロード車や商用車の生産を計画していると報じられている。また、台湾の裕隆汽車(Yulon Motor)がカラチャイ・チェルケス共和国のDerwaysの工場で「Luxgen7 SUV」を生産することを検討している。Derwaysはロシアの自動車メーカーで、中国の力帆汽車(Lifan)や第一汽車のHaimaブランドの車を組立生産している。(後略)

(週刊ダーリニ・ボストーク通信889号より抜粋)




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